当勉強会が特に重視しているのは、「IT知識の体系的な習得」と「自然な日本語での翻訳」の2点です。
小手先のIT知識で、翻訳調の月並みな訳文を作れるだけでは、プロのIT翻訳者として十分とは言えません。本物のプロとして、継続的に仕事を受注しお金を稼いでいくためには、さらに上のレベルを目指すことが重要です。当勉強会はそのための助けになればと考えています。
以下、それぞれについて説明します。
一口にITやコンピュータと言っても、対象分野は多岐にわたります。すべての分野のすべての知識を深く掘り下げて習得することは、一朝一夕には実現できません。広さと深さを同時に追求するのは、賢明とは言えないでしょう。
かといって、ITの中の特定分野に範囲を絞り、そこだけを深く学んだとしても、翻訳者の背景知識としては心許ないものがあります。常にその分野の翻訳案件ばかりを受注できるとは限らないからです。安定して仕事を確保するためには、IT関連の様々な分野への幅広い対応力が欠かせません。
そこで、なるべく早い段階で、IT全体の基礎知識を、体系的に広く浅く学んでおくことをお勧めします。まずは各分野の全体像を理解し、用語や概念になじんでおく。そうすれば、いざ特定の分野の翻訳案件を受けたときにも、その分野の知識を必要に応じて掘り下げていくことができるはずです。
当勉強会では、「IT基礎知識講座」「IT翻訳実践講座」という2つの講座を通じて、IT技術やコンピュータに関する広範な知識を身に付けていきます。特に、IT基礎知識講座は、IT技術者向けの公的資格「基本情報技術者」のテキストを教科書として使用し、基礎知識を体系的に学んでいきます。IT業界の実務レベルに通じる知識を習得するための第1歩として最適です。
当勉強会で学ぶ訳し方は、マニュアルやオンラインヘルプの翻訳で見られるような、定型的・直訳的な訳文の作り方ではありません。書籍や雑誌記事などの翻訳にも通じる、自然な日本語で読みやすく訳す力を高めていきます。
※ここで言う“直訳”とは、辞書に出ているような一般的な訳語を使い、高校の英語の授業や翻訳学校の入門講座で教わるような定型的な訳し方をそのまま適用した、ぎこちなさの残る訳、という意味です。
IT分野の実務翻訳の場合、「直訳で意味が通じる所は直訳で十分」とか、「まずは原文の意味や内容を正確に伝えることが重要であり、日本語の読みやすさやなめらかさは二の次でいい」といった教えを説く先生方もいます。あるいは、「こなれた日本語にしようとすると、原文の内容から逸脱したり、勝手な追加や省略を行ったりする傾向が見られる」といった理由で、そうした態度を戒める先生もいらっしゃるようです。
でも、当勉強会は、あえてそうした教えの逆を行き、ぎこちなさを排した自然な日本語で表現することを重要視しています。「直訳で通じるような所こそ、あえて別の訳し方を考え、なるべく自然でなめらかな日本語で訳そう」というスタンスです。
その大きな理由は、お客様の多様なニーズに応えるためには、直訳調の訳から読みやすさ重視の訳まで、あらゆる訳し方に対応できる柔軟性が欠かせないからです。
実際の翻訳の仕事では、「直訳で十分」かどうかは、必ずしも訳者の一存では決められません。一口にIT翻訳といっても対象の幅は広いですし、お客様の好みもさまざまですから、読みやすさ重視の訳や、翻訳臭さの一切ない訳を求められることもあります。
ところが、普段から直訳調の定型的な訳し方ばかりしていた人が、翻訳臭さのない訳文をいざ作ろうとしても、なかなか簡単にはいきません。そりゃそうです。普段練習してもいないことを、いきなり本番の仕事でやれと言われても、スムーズにいくわけがありません。逆に、できる限りなめらかで自然な訳文を作る練習を普段から実践していれば、定型的な訳し方を求められたとしても対応は難しくないはずです。それこそ、定型的に処理すれば済む話だからです。
当勉強会では、「IT翻訳実践講座」の翻訳課題とスクーリングを通じて、なめらかで読みやすい訳文の作り方を学んでいきます。